ロシア大統領選挙は、3月15日から3日間かけて行われた投票はすでに終了し開票作業が進んでいます。
ロシアの中央選挙管理委員会によりますと開票率およそ90%の時点で、プーチン氏の得票率は87.21%で、ほかの候補者を大きく引き離しています。
プーチン氏は日本時間の午前5時半すぎ首都モスクワ市内にある選挙対策本部で、支持者の前に姿を見せ「私たちは1つのチームで家族だ。この選挙は、国民からの信頼の結果だ。感謝する」と述べ、勝利を宣言しました。
また、ウクライナへの軍事侵攻について「特別軍事作戦における主導権は、ロシアにあり、日々前進している」と述べ、継続する考えを改めて示しました。
“ウクライナ東部や南部4州でもプーチン氏 9割前後得票”
ロシアのプーチン政権は、軍事侵攻によって一方的に併合を宣言したウクライナ東部や南部の4つの州でもロシアの大統領選挙だとする活動を強行し、中央選挙管理委員会は開票の結果、プーチン大統領がそれぞれ9割前後を得票したと発表しました。
これを受けて、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表プシリン氏はロシア国営メディアに対し「プーチン大統領は、この地域の住民にとって、真の祖国の擁護者で、責任を恐れない人だ。その行動によってロシア全土を結束させた」などと述べ、地域の住民からも支持された結果だと主張しています。
ロシアがウクライナ東部や南部で大統領選挙だとする活動を行ったことについて、日本やアメリカなど55か国以上は共同声明で「国際法上、何の効力も持たない」として、ロシアを非難しています。
プーチン大統領 勝利を宣言
プーチン氏は先ほど、日本時間の午前5時半すぎ首都モスクワ市内にある選挙対策本部で、支持者の前に姿を見せ「私たちは1つのチームで家族だ。この選挙は、国民からの信頼の結果だ。感謝する」と述べ、勝利を宣言しました。
また、ウクライナへの軍事侵攻について「特別軍事作戦における主導権は、ロシアにあり、日々前進している」と述べ、継続する考えを改めて示しました。
また、反体制派らがプーチン政権への抗議の意思を示す行動を実施したことについて「投票の呼びかけは称賛する。しかし影響は何もなかった」と述べ、効果はなかったとする見方を示しました。
そのうえで、各地の投票所で建物の中で放火したり、投票用紙を汚したりと選挙への反発とみられる動きが相次いだことを念頭に「投票用紙を台なしにした人は人々を混乱させるもので民主主義ではない。罰せられるべきだ」として、非難しました。
このほか、ロシアの反体制派の指導者ナワリヌイ氏が死亡したことについて「ナワリヌイ氏の死は悲しいことだ」と述べ、名前に言及し、死を悼む姿勢を示しました。
そのうえでナワリヌイ氏が死亡する前に、欧米側で拘束されている人と交換する交渉があったとして「私は同意すると言った。しかし、死亡し、できることは何もない」と述べました。
ナワリヌイ氏については、支援団体の幹部がナワリヌイ氏が死亡する前日、ドイツに収監されているロシアの元工作員の受刑者と交換し、釈放する交渉が最終段階にあったと主張していました。
さらに、ウクライナ侵攻をめぐりフランスのマクロン大統領が地上部隊の派遣の可能性を言及したことについて問われたのに対し「いまの世界ではあらゆることがあり得る。これが第3次世界大戦の瀬戸際になりうる」と述べ、けん制しました。
一方、「ロシアは和平交渉に賛成しているが、敵の弾薬不足のためではない」と述べて、和平交渉に応じる構えを示しました。プーチン大統領は、これまでもロシアの安全保障を前提にした和平交渉に応じる構えを示していて、欧米側に揺さぶりをかけています。
ナワリヌイ氏の妻 ドイツロシア大使館の前で抗議
ロシアの大統領選挙の投票最終日となった17日、ドイツの首都ベルリンでは、在外投票が行われている現地のロシア大使館の前に、2月に死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻ユリアさんら多くの人が集まり、プーチン政権への抗議の意思を示しました。
ベルリンにあるロシア大使館の前には17日、在外投票に訪れた人たちの長い行列ができ、中にはプーチン政権の批判を続け、先月死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻、ユリアさんの姿もありました。
訪れた人たちは「ユリア。私たちは共にある」と声を上げて連帯を示したり「戦争をただちに止めろ」などとウクライナ侵攻に反対するシュプレヒコールを繰り返したりしていました。
ユリアさんや支援団体は、投票用紙にナワリヌイ氏の名前を書くなどして、プーチン政権への抗議の意思を示すよう呼びかけていて、ユリアさんは訴えに賛同する人たちから握手を求められていました。
ユリアさんは、多くの支持者らを前に「私と一緒に並んでくれてありがとうございました」と話し、プーチン政権への抗議の意思を示す行動に参加した人々に謝意を示しました。
またユリアさんは「ナワリヌイ」と書いて投票したことを明かしたうえで「大統領選挙の1か月前に、すでに投獄されていたプーチンの主要な政敵が殺害されることなどありえない」などと述べ、改めてナワリヌイ氏はプーチン政権によって「殺された」という認識を示し、強く非難しました。
投票に訪れた26歳の男性は「これまでの大統領選挙で在外投票にこのような長い行列ができたことはないと思います。ほとんどの人はプーチン氏に反対していると思います」と話していました。
また25歳の女性は「プーチン氏は本当に悪い人物で多くの人の命を奪いました。ロシアで本物の選挙が行われないことをとても残念に思います」と話していました。
一方、ロシアの人権団体によりますと、投票を妨害したなどとして17日に国内21の都市で少なくとも85人が当局に拘束されたということです。
ヨーロッパ各地で抗議の声
17日、ヨーロッパ各地でプーチン政権に抗議の意思を示す集会などが開かれました。
このうち、フランスのパリでは、エッフェル塔前の広場におよそ80人の市民などが集まりプーチン大統領について非合法な活動をしていると非難したり「ウクライナと連帯を」などと声をあげたりしていました。
このあと、参加者たちはプーチン大統領と違い「ロシア人は戦争に反対だ」などと書かれたプラカードを掲げながらパリ市内を行進しました。
また、イギリスのロンドンでは在外投票が行われている現地のロシア大使館前に大勢の市民などが集まり「ロシアに自由を。ウクライナに平和を」などと声をあげていました。
投票のために大使館を訪れたロシア人の女性は「ウクライナへの支持を示すため、ウクライナの国旗を身に着けて来ました。私はこの戦争に反対です」と話していました。
キーウ市民 “選挙は公正なものではない”
ロシアの大統領選挙でプーチン大統領が当選する見通しとなったことについて、ウクライナの首都キーウでは、市民から選挙は公正なものではないなどと指摘する声が聞かれました。
このうち63歳の男性は「武装した人間に『ここにサインしろ』と言われそうしない人がいるだろうか。民主主義の国に住む私たちには理解できない」と話し、選挙は当局の圧力のもとで行われたとして批判しました。
48歳の女性は、プーチン氏が9割近い得票率を得たとされていることについて「そんなのはうそだ。あり得ない。ロシア国民は彼のことを恐れているのだ」と話していました。
その上で「ロシアで変化が起きることを信じている。革命のようなものが必要だ」と話し、ウクライナへの軍事侵攻を正当化しているプーチン政権を終わらせる必要があると主張しました。
また23歳の男子学生は「あまり注目していなかった。私たちにとっては、アメリカ大統領選挙のほうが関心がある」と話し、ウクライナへの軍事支援が1つの争点となる、ことし11月のアメリカ大統領選挙のほうが重要だという見方を示しました。
ゼレンスキー大統領 “正当性などあるはずがない”
ロシアの大統領選挙でプーチン大統領が当選する見通しとなったことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は17日新たな動画を公開し「この選挙まがいの行為に正当性などあるはずがない」と述べ、選挙に正当性はないと非難しました。
そして「この人物が、ただ権力に溺れていて、永遠の支配を手にするためあらゆる手段を講じているということを、世界中の誰もが理解している。 個人的な権力を長引かせるために、悪事を尽くしている」と述べたうえで、プーチン大統領は戦争犯罪で裁かれるべきだという考えを改めて示しました。
ホワイトハウス NSC “選挙 自由でも公正でもない”
アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は17日、声明で「結果は驚くものではなかった。プーチン氏が政敵を投獄し、対立候補が立候補するのを妨げてきたことを考えれば、選挙が自由でも公正でもないことは明らかだ」としました。
イギリス キャメロン外相「自由で公正な選挙とは言えない」
ロシアの大統領選挙について、イギリスのキャメロン外相は17日SNSに投稿し「ロシアで投票が締め切られた。 ウクライナ領内で違法に選挙が実施された。有権者の選択肢は限られ、独立した監視もなかった。これでは自由で公正な選挙とは言えない」として、軍事侵攻によって一方的に併合を宣言したウクライナ東部や南部でも選挙だとする活動を強行したなどとして、選挙の正当性に疑問を示しました。
プーチン氏とは
ウラジーミル・プーチン大統領は、71歳。
大学で法律を学んだあと、旧ソビエトの治安機関、KGB=国家保安委員会に所属し情報工作員として旧東ドイツなどでも諜報活動にあたりました。
ソビエトの崩壊後、ロシア第2の都市で、生まれ故郷のサンクトペテルブルクの副市長をつとめた後、大統領府の副長官やFSB=連邦保安庁の長官を歴任し、1999年、当時のエリツィン大統領に首相に抜てきされました。
この年、南部チェチェン共和国の武装勢力に対して軍事作戦を行い、その断固とした姿勢が国民に広く支持されました。
この年の12月31日に任期の途中で突然辞任を表明したエリツィン大統領から大統領代行に指名され、翌2000年の選挙で初めて当選を果たし大統領に就任しました。
大統領就任後は「強いロシアの復活」を掲げてソビエト崩壊後の混乱した政治と経済の立て直しをはかり、国益を前面に押し出した外交を進めました。
3期連続で大統領を務めることが憲法で禁じられていることから、2008年の選挙では側近のメドベージェフ氏を後継者に据え、自身は首相に就任して影響力を持ち続けました。
そして、2012年、プーチン氏はメドベージェフ氏とポストを交換する形で大統領に復帰しました。
この選挙でプーチン氏は、64.2%の得票率で当選しましたが、前年12月の下院議会選挙での政権側による不正疑惑をきっかけに、かつてない批判の声にさらされ、勝利を宣言した際には涙を流す場面もありました。
2012年からは大統領の任期が1期4年から6年に延長され、プーチン氏は2018年に行われた選挙でも当選しました。
ウクライナを巡っては、2014年に南部クリミアを一方的に併合したのに続き、2022年2月に全面的な軍事侵攻に踏み切りました。
軍事侵攻に対して欧米側などは激しく非難し制裁を科しているほか、ICC=国際刑事裁判所は戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に逮捕状を出しています。
プーチン氏は、これまで20年あまりにわたって実権を握り続けてきましたが、4年前に憲法が改正され、2036年、83歳まで続投することが可能となっています。